うろこ雲のように

日々の生活の中で…

いなくとも良い存在…狭間な心 ④

 

七夕の日に遠くにいる彼と

会えるはずだった。

5ヶ月ぶりだったのに

会えなかった。

 

彼が推した日なのに、彼自ら壊した。

原因は仕事。

彼の勤務先で 内部告発があり

メデァも騒ぎ出していた。

 

「告発した人が何をするかわからない。」

「今、来られたら困るんだ」

「今回はキャンセル。すまない」

 

そう言われたら、駄々こねられないじゃん。

もう、飛行機も予約してた。

お金も無駄に散りましたわ。。

怒りより、なんだろ……

 

虚無感。

 

遠くにいる彼を責めたりはしないけど

なんとなく

どうでもよくなってしまった。

 

 ラインや電話は短いけど毎日ある。

だけど無理してでも会う気持ちがないのかも。

 

別れ話をふったこともある。

アンルイスの「グッド バイ マイラブ」を

ラインに貼り付けてあげたわ。

たまたま聴いていただけなんだけど。

 

「私の気持ちよ!」

「少しは理解して、この鈍感!」

 

なんて、思いを込めたんだけど

スルーされた。

 

暫くして彼はヘッドハンティングされ

再就職した。

あの騒ぎを片付けて辞めたみたい。

常に就活はしてたから

タイミングだったんだと思う。

 

マンションの8階にあった彼の部屋から

眺める景色は

高いビルばかりだったけど

目の前にあった

遊 具のたくさんある広い公園が

懐かしく浮かんでくる。

マンションを出て

その公園を過ぎ右手に入り込んでいくと

平屋の小規模なスーパーがあった。

彼の自転車は大き過ぎて

転ぶと危ないからと

いつも歩いて買い出しに行ったっけ。

戻る時は迷子になり

どこで道を間違えたのかも気づかず

都会にも狐がいる‼︎

なんてふとよぎったり。

 

もう、あのマンションには

行けないんだなぁ……

 

狭いキッチンだったけど

冷蔵庫はでかく

よく、消費期限切れの卵とかあった。

広〜いベランダに無造作に

脱ぎ捨てられてたクロックス。

お風呂場にあった固形石鹸。

今時使わないでしょ?って笑えた。

たくさん料理を作っても

テーブルがないから床で食べたり。

イスラム教徒か?って感じだった。

 

引越しのために

電化製品も家具も

ぜ〜んぶ捨てられて

私との思い出も

捨てられた気分だった。

 

「4月からは車で2時間あれば

会いに行ける距離になる」

「ほんまかいな?」

 

ほらね、やっぱり、そう上手くいかない。

 

確かに近くなったけど

新幹線でも3時間半かかるじゃない。

期待するだけ落胆が大きいのだ。

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かたや ボーカルの彼の存在。

 

蛍を見た。

 

夏の夜

砂利道を二人で歩いた。

丸い月が二人を照らしていた。

静かな夜だった。

 

ジャワジャワと田んぼ脇の草むらから

水の流れる音がする。

その湧き水のあたりに沿い

仄かに、しかし、しっかりと

光を放つ蛍があちらこちらから

ふわりと浮き上がってくる。

 

二人で並んで歩いていると

5メートル位先から

ふわりと浮かんだ1匹の蛍が

私を目掛けて飛んできた。

ゆらゆらと私の左の頬をかすめて

すうっ〜っと消えて行った。

スローモーションのようだったけど

一瞬だった。

 

「お前の甘い香りに引き寄せられたんじゃない?」

 

確かに私は

「甘い、良い香りがする」って

言われたことがあった。

でも、それって単純に

柔軟剤のせいなんだけど。。

 

「蛍は風がない、湿度が高い時に飛んでくる」

「蛍は雌が光りを放つんだ」

 

よく、そんな事知ってるなぁ……

 

あたりを歩いていると

廃校になった小学校

小さな林に囲まれた小高い神社

ほとんどが田んぼが続いてるけど

遠くに家の灯りも見える。

月明かりがほんのりと映し出していた。

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ボーカルの彼はあの激しい一面とは裏腹に

自然に寄り添う人なのか?

 

つい先日も彼は

真っ黒な顔をして

 

「キャンプに行っていたんだ」

「終わって、まっすぐ会いにきた」

 

恥ずかしがりもせずにまた

平気で話す。

 

「山を登ってきた」

「8時間コースで、さすがに足がつった」

 

持ってるバッグや靴

着てるものは  

登山メーカーが多い事に気がついた。

山男?

少ない情報を拾いあげる。

 

彼はストレート過ぎる。

それが嬉しいこともあり

厄介なこともある。

 

「好きだ」

なんて一言も聞いたことない。

ふらっとやって来て

跡形もなく去って行く。

 

愛されてるの?

単なるはけ口なの?

わからなくなる。

 

 

ボーカルの彼に惹かれるのは何故?

遠く離れてる彼にまだ応えてるのは何故?

 

そして、彼らが

私を離さないのは何故?

 

そんな疑問だらけ。

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